2013年09月30日

地獄でなぜ悪い 鑑賞感想

園子温最新作はとんでもないエンタメ映画だった。
あのオモいテーマやらシャカイセイやらの印象が強かった園子温がエンターテインメントに挑んで「何が悪い」と強気な煽りも納得の面白さだった。

自分のために敵対する組のヤクザをめった刺しにして服役中の嫁が出所する。その出所祝いにと、目に入れても痛くないほど可愛い(実際ものすごく可愛い)愛娘主演の映画を作る。そのために巻き込まれた男と、映画を作りたい男、そして敵対するヤクザの組長・組員を巻き込んで超リアルなヤクザ映画がクランクイン!
クランクアップに生き残るのは果たして?というような感じの、軽い説明だけでもぶっ飛んだ映画である。
主役の組長役には國村隼。アウトレイジで見せた強面そのものに怖いヤクザの親分を演じている。
敵対する組の組長役には堤真一。顔も殺陣もイイ伊達男だがこちらちと内面に難ありな気がしないでもない。

とにかく血まみれ血まみれ血まみれのインパクト。
今まで様々な映像でインパクトを与えてきた園子温監督さすがと言わざるを得ない。
特に少女時代のミツコ(國村隼の娘)が血の海で踊り歌うというシーンがあるのだが、その異様さと反比例する可憐さ。
偽物のように真っ赤な血のプールが「それでいい!」と思える芝居じみた演出が楽しい。
そう、見ていて不謹慎だとか悲しまなきゃと思う前に楽しいなと笑ってしまう。そんな映画だったと思う。
芯に一本ストーリーは据えられてはいるものの、それをこねくり回して舐めまわし、ああだこうだといじり倒すような見方をスクリーンの向こうから笑い飛ばされて、つられて笑っちゃうようなパワフルさにノックアウトされた。

主人公の娘を演じる二階堂ふみさんがとても素敵。
ファッションも演技も容姿もすべて可愛くて素敵。パンフレットによると監督と一緒に109で衣装を自ら選んだということだがまさにミツコにぴったりな雰囲気だった。
若干19歳という若さにして圧倒されるほどの印象があり、目の持つ力が印象的だと思う。
初めて拝見したのは舞台「八犬伝」。まさか芸歴も年も浅いとは思わず、中堅女優さんなんだなと思ったら大間違い。
(そもそも芸能人の名前や顔をあまり知らない私がよくない)
舞台をスクリーンに移しても二階堂さんの雰囲気というか存在感は観ていて心地好かった。

撮影のクライマックスは組同士の抗争シーン。何故か拳銃でなく日本刀を携えたヤクザが切って切って斬りまくる。
古風な日本家屋が血に染まって腕が飛ぶ足が飛ぶ首が飛ぶ!
文字にすると怖いようだがこれが痛快。切れのいいテンポで撮影快調。

これまで、楽しい!エンタテインメント!と書いたがラストシーンにはやっぱりひとくせある園子温らしさがあったように思う。
楽しいだけの馬鹿騒ぎでは終わらない、最後まで驚きと考える余韻をくれるラストカットだった。


Posted by 野村 千代  at 02:18 │Comments(0)感想文

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